Akihiko Matsumoto『Metamemory』―アルゴリズムに《人格》は宿るか?―


http://plumus.tokyomax.jp/release/mus-012


quelltll名義での前作『Mosaic Gold』では、中世から近現代に至る各時代の西洋音楽をダンスミュージックにリメイクしてみるというプロセスの中で、たとえば、初期YMOを駆動させていた楽曲生成のアルゴリズムの一端を浮かび上がらせているかのように感じられた点を個人的には面白く聴きました。

そして本作『Metamemory』では、そこはかとなくポップでもある出音の中に、機材との戯れとしてのランダマイズとは別次元の厳密にコントロールされたアルゴリズムが生み出す超絶的に複雑なノイズやビートが明滅的に交錯するという、まさに未知の音楽体験と呼ぶにふさわしい仕上がりになっているのではないかと思います。

M4「Linearlity」における優美な旋律、M5「Thanatos」における凶暴な律動、M7「Ramification」における繊細な和声。これら速度と密度に満ちた音像は、たしかに人間には生み出すことのできない過剰さが溢れているのですが、同時にそこには、アルゴリズムから生成されたとはにわかには信じ難い強烈な個性(=人格)を見出してしまうという二律背反的な感覚が引き起こされます(余談ですが、M5における暴走するビートには、小室哲哉さんの指ドラムを彷彿とさせる官能性すら感じ取れました)。

なお、松本昭彦さん自身によって本作の詳細な解説がなされていますので、そちらもぜひご一読いただければと思います。>http://akihikomatsumoto.com/works/metamemory.html