ラヴェル/冨田勲/テクノポップ

学生時代、坂本龍一が言及している作曲家、編曲家、演奏家の作品を聴き、その中に坂本龍一的な響きを見つけては一人喜ぶといったようなことばかりしながら過ごしていた時期があった。

その探求の初期段階で、一聴した瞬間に虜になってしまったのは、フランス近代音楽の巨匠、モーリス・ラヴェルの作品だ。初めて『クープランの墓』の「前奏曲」を聴いたときの衝撃は今でもよくおぼえている。明晰かつ論理的に積み重ねられた色彩豊かな響きの眩暈がするほどの連鎖。そしてその背後にはどこかマシニックなビートさえ感じ取れる。

ラヴェルの作品は、ピアノ曲管弦楽曲もどれも本当に美しいものばかりだが、当時、特に気にかかった曲は『マ・メール・ロワ』の「パゴダの女王レドロネット」だ。印象派的な浮遊感のある和声の上で東洋的な旋律が跳ね回るその様は、まるで初期YMOの楽曲のようでもある。

==

その後、小室哲哉のルーツを探るべく冨田勲のアルバムをチェックしていた時期に、『ダフニスとクロエ』というラヴェルの作品を録音したアルバムがあり、そこにはあの「パゴダの女王レドロネット」も収録されていることを知った。

ダフニスとクロエ

ダフニスとクロエ

周知のように、これらの楽曲はすべてシンセサイザーを用いて編曲されているため、ここでは原曲が持つ「テクノポップ度」が格段に際立っている。おそらく、同時代のクラフトワークの作品と並べて聴いたとしても、何の違和感もないのではないだろうか。そして、この冨田勲によるラヴェル「パゴダの女王レドロネット」は、いつかどこかでDJをする機会があればかけてみたいと密かに思っている一曲でもある。