Keiichiro Shibuya『ATAK021/Massive Life Flow』―そのたびごとにただ一つ、世界のはじまり―

ATAK021 Massive Life Flow [DVD]アーティスト: Keiichiro Shibuya出版社/メーカー: ATAK発売日: 2014/10/07メディア: DVDこの商品を含むブログ (2件) を見る黒いジャケットをまとった渋谷慶一郎とピアノに並ぶ白と黒の鍵盤にフォーカスしたモノクロームの映…

私的TKベスト10

TK

近日発売される『小室哲哉ぴあ TK編』。その中の企画の一つである「小室哲哉の楽曲ベスト10」に、私も真剣に取り組んでみました。 小室哲哉さんの楽曲の中から10曲を選ぶ…。その過程は、この愛すべき一曲を切り捨てなければならないという怖さとの戦いでもあ…

Akihiko Matsumoto『Metamemory』―アルゴリズムに《人格》は宿るか?―

http://plumus.tokyomax.jp/release/mus-012 quelltll名義での前作『Mosaic Gold』では、中世から近現代に至る各時代の西洋音楽をダンスミュージックにリメイクしてみるというプロセスの中で、たとえば、初期YMOを駆動させていた楽曲生成のアルゴリズムの一…

山下智久×渋谷慶一郎「Moon Disco」から考える新世紀のJ-POP

遊アーティスト: 山下智久出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン発売日: 2014/08/20メディア: CDこの商品を含むブログ (8件) を見る 先日リリースされた山下智久さん(以下、“山P”と呼びます)のアルバム『遊−ASOBI−』。この先端的なダンスミュー…

2013年ベストディスク10/音圧と音色のオーバードーズを越えて

些か荒唐無稽ではあるが、21世紀初頭における音楽史的な達成の一つは「フレンチエレクトロ」にあった、という仮説は成り立つだろうか。それはつまり、音圧と音色によるアディクト、という音楽における新たな快楽性を切り拓く端緒となった、という意味におい…

Keiichiro Shibuya『ATAK019 Soundtrack for Children who won't die, Shusaku Arakawa』―音楽に祝福された子供―

ATAK019 Soundtrack for Children who won't die, Shusaku Arakawaアーティスト: Keiichiro Shibuya出版社/メーカー: ATAK発売日: 2013/10/30メディア: CDこの商品を含むブログ (2件) を見る 本盤『ATAK019/Children who won't die』は、『ATAK010/filmach…

shotahirama『NICE DOLL TO TALK』─セカイの音に耳を開く─

NICE DOLL TO TALKアーティスト: shotahirama出版社/メーカー: SIGNALDADA発売日: 2012/10/07メディア: CD購入: 1人 クリック: 29回この商品を含むブログを見るshotahiramaさんの『NICE DOLL TO TALK』に寄せて2000字程のテクストを書き下ろしました!http:/…

イニシエーション/トリニティ/フラクタル

イニシエーション(初回生産限定盤)(Blu-ray Disc付)アーティスト: 渋谷慶一郎+東浩紀 feat.初音ミク出版社/メーカー: Sony Music Direct発売日: 2012/12/26メディア: CD購入: 3人 クリック: 30回この商品を含むブログ (5件) を見るイニシエーション(DVD付)ア…

2012年ベストディスク10+/おわりの音楽のはじまり

2012年も数多くの素晴らしい音楽との出会いがありましたが、それでもつい繰り返し聴いてしまう作品というのは自然と絞り込まれてくるもので、やはりそれは個々人の音楽履歴が織り成す私的な音楽地図が、べき乗分布的に色濃く反映されてしまうからなのかもし…

Mark Fell『Sentielle Objectif Actualite』―記憶可能な音と記憶不可能な音の〈中間層〉―

Sentielle Objectif Actualiteアーティスト: Mark Fell出版社/メーカー: Editions Mego発売日: 2012/09/11メディア: CD購入: 6人 クリック: 64回この商品を含むブログ (2件) を見るひとたび本盤を耳にすれば、その音色の密度と律動の精度に誰もが光速で打ち…

高橋征司『N41°』―手術台の上のミシンと雨傘のような音楽―

N41°アーティスト: 高橋征司,Seiji Takahashi出版社/メーカー: Te Pito Records発売日: 2012/05/23メディア: CD購入: 7人 クリック: 97回この商品を含むブログを見る高橋征司のデビューアルバムとなるこの『N41°』を聴き終えた瞬間に想起されたのは、19世紀…

Keiichiro Shibuya『ATAK018 Soundtrack for Memories of Origin Hiroshi Sugimoto』─記憶の中で鳴る音の純度─

ATAK018 Soundtrack for Memories of Origin Hiroshi Sugimotoアーティスト: Keiichiro Shibuya出版社/メーカー: ATAK発売日: 2012/04/25メディア: CD購入: 2人 クリック: 64回この商品を含むブログ (8件) を見る現代美術家杉本博司がその代表作の一つである…

TKスタディーズ002 - TM NETWORK 『I am』─僕たちは未来から差しのべられた手をつかむことができたか─

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I amアーティスト: TM NETWORK出版社/メーカー: avex trax発売日: 2012/04/25メディア: CD購入: 2人 クリック: 17回この商品を含むブログ (7件) を見る2012年になり本格的に活動を再開させたTM NETWORK。そのニューシングル『I am』が満を持してリリースされ…

ロックDJ小室哲哉から考える

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去る2月18日に行われた「YATSUI FESTIVAL 2012」に、あの小室哲哉がロックDJとして参戦しました。ターンテーブル+シンセサイザーという変則的なスタイルでなされたパフォーマンスは、多くの観客に、大きな驚きをもって迎え入れられたということが、数多くの…

渋谷慶一郎 feat.太田莉菜の『サクリファイス』はなぜかくも中毒的なのか?

サクリファイスアーティスト: 渋谷慶一郎・太田莉菜出版社/メーカー: メディアファクトリー発売日: 2012/02/15メディア: CD クリック: 42回この商品を含むブログ (10件) を見る渋谷慶一郎は様々な媒体を通して「3.11以降の音楽」をめぐる刺激的な考察を断続…

TKスタディーズ001 - 中森明菜 『愛撫』

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今回より「TKスタディーズ」という試みを不定期で行っていきたいと思う。ここではその名のとおりTK=小室哲哉の楽曲分析を通し、その魅力の一端に迫ることを目指している。とはいえ私は正式な音楽教育を受けた経験はない。したがってその内容には誤りが含ま…

2011年ベストディスク10+

2011年に聴いた新譜の中から10枚のアルバムをセレクトしてみました。その基準は「聴くたびにどれだけ心が動いたか」という点にあります。したがってその内容は私的で一貫性のない雑多なものとなっていますが、もし今年聴き逃してしまっていた“moving”な一枚…

Get Wild - TKATAK mix

先日の渋谷慶一郎さんによるツイート「今度はTMネットワークのDVDがかかってます」「ビデオアートぽいな」「次はGET WILDきた」「うた抜くとADHぽいなw」を受け、実際にTMネットワークの「Get Wild」とADHの実質的なテーマ曲となっている「4'33+」(『ATAK00…

keiichiroshibuy語録 vol.003

2011年6月に東京芸術大学で行われた渋谷慶一郎さんによる特別講義。その模様を文字に起こしてお伝えする第3弾。いよいよ最終回です。今回は「質疑応答」のパートを中心に取り上げますが、とても充実した内容で、最終的には結構な字数になってしまいました。…

keiichiroshibuy語録 vol.002

2011年6月に東京芸術大学で行われた渋谷慶一郎さんによる特別講義。その模様を文字に起こしてお伝えする第2弾です。今回紹介するパートでは、「3.11以降の音楽」について非常に鋭い論点が提示されており、まさにこの特別講義全体のハイライトとなっています…

keiichiroshibuy語録 vol.001

2011年6月2日に東京芸術大学にて渋谷慶一郎さんによる特別講義が行われました。その模様はUstで中継され、アーカイブ化もされているので、そちら(http://www.ustream.tv/recorded/15110719)を実際にご覧いただくのが一番だと思うのですが、90分近い時間の…

Thurston Moore『demolished thoughts』

Demolished Thoughts [輸入盤CD] (OLE9532)アーティスト: Thurston Moore,サーストン・ムーア出版社/メーカー: MATADOR発売日: 2011/05/24メディア: CD購入: 6人 クリック: 27回この商品を含むブログ (18件) を見る実のところ私はソニック・ユースのアルバム…

TKポリフォニー/即興性が生み出す偶発的快楽

小室哲哉によって生み出される音楽の魅力を、彼自身による「アレンジ」と切り離して考えることは難しい。その魅力について語る上で、まず坂本龍一による次のような発言を導きの糸としたい。 それって、そういう楽理をまったく知らないブライアン・イーノたち…

UTAUツアー仙台公演/UST配信の贈り物

2005年12月25日。 クリスマスの日に聴いた「戦場のメリークリスマス」。 これは何とも忘れがたい思い出だ。 この日は、妻と二人で坂本龍一のソロピアノコンサートを観に来た。 そして妻のお腹の中には、妊娠4ヶ月を過ぎたころの息子もいた。 微かな胎動が感…

坂本龍一/UST配信がもたらす聴取体験の変容

北米ツアーに始まり、UTAUツアーを経て、韓国公演へと結実した坂本龍一のUST配信。この一連の試みが社会的に与えたインパクトは多岐にわたるが、それらについて論じるのは他の方々にお任せすることにして、このブログでは、例によって私的な体験を拙い文章で…

ラヴェル/冨田勲/テクノポップ

学生時代、坂本龍一が言及している作曲家、編曲家、演奏家の作品を聴き、その中に坂本龍一的な響きを見つけては一人喜ぶといったようなことばかりしながら過ごしていた時期があった。その探求の初期段階で、一聴した瞬間に虜になってしまったのは、フランス…

TKフィルター/記憶から紡ぎ出される音たち

TK

小室哲哉は87年のある雑誌アンケートで「人生のベスト・アルバム」として以下の5枚を挙げている。 ・ムソルグスキー「展覧会の絵」 ・メンデルスゾーン「バイオリン協奏曲」 ・ホルスト「惑星」 ・キース・ジャレット「フェイジング・ユー」 ・ELP「恐怖の頭…

ポップアナリーゼ

『思想地図β』に収録された菊地成孔+佐々木敦+渋谷慶一郎による座談会「テクノロジーと消費のダンス」の中で中心的な話題となっていた「ポップアナリーゼ」という言葉が最近気にかかる。「ポップアナリーゼ」とは、文字通り「大衆音楽(ポップス)の楽曲分…

予言の書/Digitalian

ブログタイトルをガタリ的なものにしたこともあり、新年早々、『分裂分析的地図作成法』をぱらぱらと読み返してみた。分裂分析的地図作成法作者: フェリックスガタリ,F´elix Guattari,宇波彰,吉沢順出版社/メーカー: 紀伊國屋書店発売日: 1998/02メディア: …

まずは気楽に。

ツイッターを初めて半年ほど。ようやく自分なりの立ち位置や文体のようなものをつかみつつあり、楽しみながら続けている。そしてブログ。ストックに値する内容のものをと考えると、そのプレッシャーからなかなか筆が進まない。したがって、まずは気楽に、ツ…